81.科学の扉をノックする [その他]
菌類月間は先週で終わりにしようと思ってたら、今週の本小川洋子著「科学の扉をノックする」に細胞性粘菌の研究者竹内郁夫氏のことが出てきて、再び菌類の世界に引き戻されてしまった。
粘菌は大きく2種類に分かれるらしい(知らなかった)。1つは普通の粘菌なのだけど、これが実は普通ではなくて、細胞分裂で核が2つになったところで細胞質が分裂せず、それがひき続いて何度も起こるため、多数の核を持つ多核細胞で成り立っているらしい。
ところで、前回もリンクを張ったけれど、“普通の粘菌”が分からない人は科学博物館の「変形菌の世界」へどうぞ。 →私を押して。
さて、もう1つだが、“普通に” 細胞膜に包まれた細胞質の中に核が1つだけある細胞からなった細胞性粘菌と呼ばれるもので、大きさは15ミクロンぐらい。つまり普段は顕微鏡サイズなんだけど、子実体を作る段階になるとこの細胞が10万ぐらい集まって1~2ミリぐらいのナメクジみたいなものになって動き回るらしい。不思議ー!
「細胞性粘菌」っていうのがいるのは、8月の末に放送された(再放送で、元は5月に放送したらしい)NHK教育TVの「サイエンスゼロ」に出てきたので知ってたけど、そういう根本的な違いがあったとは! →そのときの専門家ゲストの中垣俊之氏の研究室のHP
この放送で「風の谷のナウシカ」に粘菌が出てくるという話が出た。そうだったっけ?腐海は菌類じゃなかったっけ。
と思い、「風の谷のナウシカ」を1巻から読み直してみた。ありました。そうだった、大海嘯のとき、巨大化した粘菌と王蟲の群れが合体して新たな腐海となり、大地を飲み込むんだった。
いやぁ、やっぱりおもしろいな「風の谷のナウシカ」は。巨大粘菌は途中で死んじゃうんだけど、最後まで読み通してしまった。壮大な叙情詩だね。(それにしても何であんなつまんないアニメ映画「風の谷のナウシカ」を作ったんだろう、宮崎駿は?)
さて、今週の本は「博士の愛した数式」などで有名な作家小川洋子氏が、7人の科学者・科学の目を持った人を訪ねて、その専門分野についていろいろと教わってくるという内容。
その7人とは、天文学者渡部潤一氏(「74.月の科学」の著者)、鉱物の伝道師堀秀道氏、DNA研究者の村上和雄氏、巨大加速器スプリング8の研究者古宮聰氏、細胞性粘菌の竹内郁夫氏、遺体科学者の遠藤秀紀氏、そして阪神タイガースのトレーニングコーチ続木敏之氏(これは小川先生の好みか)。
いろいろなことを教わって、そこからいさすがの作家の感性でいろいろなことを感じ、文章をつむいでいく。例えば「時間」の概念についても。
「時間とは単なる概念ではなく、動きや手触りを持った、もっと物質に近い形で存在しているのではないかと思えてくる。」
いわゆる入門書ではない。基本的な解説(これが結構分かりやすい)もあるんだけど、まさに“科学の扉”をノックした人の“旅行記”という感じでした。
ところで、細胞性粘菌だけど、個々に暮らしていたものが10万体集まり、1~2㎜のナメクジみたいな形で移動する(というのは上に書いた通り)。そのうち地面に接している部分の細胞のまわりに何と細胞壁ができて堅くなる。土台になったのだ!
そしてその上の細胞が柄になり、その上の細胞が胞子になっていく。別々の個体だったものが1匹の個体であるかのように振る舞う。胞子になれなかった個体はただ死んだだけなのか?それとも全体で1個体となり、子孫を残せたことになるのか?
生命って何なんだろうね。不思議だね。
生命はどんなに小さくとも
外なる宇宙を
内なる宇宙に
持つのです。 -ナウシカ-
◆中学生で読める度:★★★★★
◆内容充実してる度:★★★★☆
この本に載ってるちょっと気になる言葉。
「単に 客観的な事実にとらわれているだけならば、決まりきった結論しか出てこない。誰にも気づかれず世界のどこかに隠されたままになっている新しい真理を発見しようと思ったら、理屈や常識を飛び越える感受性が必要になってくる。だからこそ、優れた科学者であればあるほど、豊かな情緒を備えている。」
いろんなもの見て、聞いて、味わって、体験して、そして考えて感受性と情緒を磨くべし!
追記:「細胞性粘菌」って言われてもイメージがつかめないだろうな、と思い、探してたら細胞性粘菌の映像を発見。弘前大学のものみたい。Real Player(無料。有料版もあるので気をつけて)が必要だよ。 →私を押して。
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湯川先生は子供の時に「荘子」の素読をやらせられてるんですよね。
私は小学校でいい加減な英語を教えるより、漢文の素読をやらせりゃいいのにって思ってます。
問題を解くとときに、特にVコースでは「ただ解けりゃいいんじゃない。エレガントに解け!」と檄を飛ばしてます。最も美しく、つまり最も納得した方法を探る、これは社会人になってからもたぶん重要なことだと思います。
by すうちい (2008-10-02 10:44)
私なんか宿題だらけです。20年ぐらい寝かせてる宿題もあります。^^;
by すうちい (2008-10-02 11:07)
こんばんは☆
>細胞が10万くらい集って1〜2mのナメクジみたいなものになって
動き回る
きゃ〜〜楽しそう!もへぇ〜!大好きじゃ〜
ずっと覗いていたいかもデス。
ナウシカ懐かしい。ラピュタはスキかも。
ジブリ作品は実は苦手なワタクシ。
世の中に対してあまのじゃくなのす。でへへ;
by mistletoe (2008-10-03 00:22)
勝手に暮らしてた連中が1匹がサイクリックAMPという物質を出し始めると(多くはエサが無くなった時など、環境悪化が原因)、それに呼応してサイクリックAMPを出しながら次々に集まってきてナメクジ(っぽく)になる。
そこからは細胞数10万の群体として、個は捨てて活動するんですよね。
つまり、そもそも初めから“個”というものがあるのか?
普通の真性粘菌の移動も実におもしろい。(゜Ψ゜) ←ドラマ「ガリレオ」に見えない?
“サイエンスゼロ”の粘菌特集、もう1回やらないかな。あるいはどこかで見られないんだろうか? You Tubeには無さそう。残ねん。おもしろかったのになぁ。
by すうちい (2008-10-03 00:54)
科学の扉・・私の興味は「遺体科学者」に向いちゃいました。
粘菌学は面白そうですがCSI、BONES好きな私には是非読みたい本ではありますね。
by ryouhin (2008-10-03 03:14)
>ryouhinさん 遺体科学の遠藤先生は「無目的に無制限に」遺体を集め、解剖して記述しているんだそうです。おもしろい人です。
粘菌はとにかく不思議!
by すうちい (2008-10-03 16:02)
>Far-eastさん え、そうですか…とニュースを見てみると、たしかにとってますね-。
受賞理由の粘菌の迷路通過は記事のサイエンスゼロでやってました。驚くべき単純なシステムで、複雑な行動をするんです。
一時期You Tubeに映像があったんですけど、今は見あたらないですね。
by すうちい (2008-10-03 16:10)
(゜Ψ゜)←ガリレオだ!
サイエンスとかけはなれておりますが…
(●)´`・) スヌーピー。
by mistletoe (2008-10-03 16:31)
おおっ、スヌーピー!
ミ゜⊃ ←ウッドストック返し!(だんだんなんだか分からなくなってきた^^)
by すうちい (2008-10-03 23:42)
粘菌のHP早速、お気に入りに登録しました。
>胞子になれなかった個体はただ死んだだけなのか?それとも全体で1個体となり、子孫を残せたことになるのか?
生命に限らず、この世、この宇宙に存在するものはすべて、偶然集まった分子の集合体のような気がします。形ある物は必ず壊れます。万物が流転します。一定の、それこそ天啓的な合意のもとに集まり、何か意味のあること、無意味なであるという意味のあることのために、存在し続けている、そんな風に考えます。一個体としての終息=死はあるかもしれませんが、物質としての死はありえないのだと。輪廻転生でしょうか、私は、こんな風に万物を見ています。
by アヨアン・イゴカー (2008-10-04 17:04)
“個”の概念が変わりまね、細胞性粘菌は。
確かに“物質としての死”はあり得ないですよね。しかも「生物と無生物の間」で福岡氏が“動的平衡”と言ってるように、生物の体は毎日毎時毎分毎秒物質が入れ替わってる。
魂はどうなんでしょう?父が亡くなった時、魂はぱーっと散っていくように感じられました。
一人の魂が転生するんじゃなくて、たくさんの魂のかけらが集まって転生するのかな? と思ってます。
by すうちい (2008-10-04 18:35)
お久しぶりです。お元気ですか?
とっても気になる本のご紹介♪早速本屋さんに行ってきます。
あと、『ちょっと気になる言葉』は素敵ですね。
W受験ですが、やっと本格始動になりそうです。
遅いですよね~~。あと3ヶ月きっています(/_;)
科学の扉…の本は私が読んでから子供達に読ませます♪
朝晩が涼しくなってきましたね。お月様もさらに綺麗に見えます。
お体ご自愛ください(*^_^*)
by はっちゃん (2008-10-05 13:45)
はっちゃんさん!
お久しぶりです~。お元気ですか?
ぢうしただろう?と気になっていました。ずっと。
この本は大人が読むとおもしろいですよ。ぜひどうぞ。
ただ品薄で手に入りにくいかも。私は注文して二ヶ月かかりました。
図書館にたいていあるみたいですけどね。
またどうぞいらしてください☆
by すうちい (2008-10-05 21:22)
放送大学で宇宙の未来放送していて
可能性の一つとして最終的に原子も崩壊する
多分陽子がかすみのように漂う世界かもと。
それ以外にも空間に亀裂がとか・・・面白いこと
いってました。
by サプライ (2008-10-06 19:01)
かなり、お久しぶりです。
今更ながら名前の漢字変換が面倒になってしまったので、潔く、平仮名で。←
博士の愛した数式、好きです。
なぜだか分からないけれど、ぼろぼろ泣いてしまった記憶があります。
私事ですが、外界との接触、久々なんですよね。うん。
by ここ (2008-10-06 20:50)
>サプライさん “見えない物質・ダークマター”が運命を握る宇宙と、可視化することができない“生命あるいは魂”、この両極端の不思議な世界に惹かれます☆
by すうちい (2008-10-06 21:38)
>ここちゃん どうしたかな? と、ずっと思ってた。
「博士…」には僕も泣いた。なんだか10年前に父親を亡くしてから涙もろくなったなぁ。特に“愛”には弱い。^^
ちゃんと学校に行ってる?心配してんだよ。
教え子用ブログ「Q○○○ ←昔のクラス名を入れる」にも遊びにおいで。(って前にも言ったかな?)
by すうちい (2008-10-06 21:53)
あんまりにも面白そうで辛抱ならず新宿のジュンク堂で買ってきました。何度も挫折しそうになった海外SFをやっと読了したので着手できそう。楽しみです。
ところで、うなりながら読んだくだんの海外SFの中に、粘菌の情報処理システムと似た仕組みの生物(こちらはもっと破天荒な設定で単細胞のアメーバが集合体となって高度な情報処理をしちゃう)が出てきたので、個人的にタイミングよく楽しく記事を拝読いたしました。
by 素風 (2008-10-10 11:21)
粘菌は複雑な迷路もすり抜けていくんですけど、それが実は簡単な2つ3つの決まり事があるだけかもしれない、というのが上記中垣氏の発見でした。
氏はこの研究でイグ・ノーベル賞を取ったわけですけど、実は科学的・工学的に重要な発見なので、イグ・ノーベル委員会は失敗しましたかね。
by すうちい (2008-10-10 14:15)
単細胞生物から多細胞生物へのミッシング・リンクかも知れませんね。
海洋生物には、多細胞生物で有りながら、群体と言う、やはり群れなのか1つの個体なのか微妙な、形態をなすモノも有るようです。
by SAKANAKANE (2008-10-14 22:17)
たぶんそうなんでしょうね。卵細胞が発生していく時の濃度勾配による細胞の分化と同じような仕組みなんじゃないですかね。
確かカツオノエボシも群体でしたよね。
by すうちい (2008-10-14 23:16)