87.戸塚教授の「科学入門」 [物理]
ちょっと前の朝日新聞に、癌で亡くなった、ノーベル賞確実といわれた物理学者が生前青少年向けの科学入門のブログを作っていて、その記事と、PC内に残っていたまだ発表していない、用意していた記事とを奥さんが一つの本にまとめて出版したという記事が載った。
それが今週の本、戸塚洋二著「戸塚教授の『科学入門』」だ。
戸塚洋二氏はノーベル賞を取った小柴氏のお弟子さんで、小柴氏と共にスーパーカミオカンデでニュートリノの観測・研究をし、世界で初めて「ニュートリノに質量がある」ことを示した。
ニュートリノは、簡単(かなり乱暴に)に言うと原子の原子核が崩壊する時に飛び出す(素)粒子で、核融合反応が起こっている太陽のような恒星からはばんばん飛び出している。![]()
どれくらい飛び出しているかというと、この本によれば我々の体を毎秒10兆個(!)以上の太陽からのニュートリノが通過しているという。
![Sun_in_X-Ray[1].png](https://blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_559/rikasanpo-hon/Sun_in_X-Ray5B15D.png)
↑ X線でとらえた太陽(wikipediaより)
なんでそんなに通過しちゃうかというと、1つはとても小さいから。この本によれば、原子を太陽系の大きさまで膨張させた時、ニュートリノの大きさは直径20㎝の球ぐらいにしかならないらしい。だからめったに体を作る原子とぶつからないわけだ。
それと電気を帯びていないから、電気を帯びた電子や陽子からなる原子と作用しあわない。正面衝突しないかぎり。
それに質量がとても小さいので、引力による作用も受けない。
つまり、ないないづくしの粒子がスカスカの我々の体や地球を通り抜けていくわけだ。
このニュートリノに関しては、スーパーカミオカンデのHP(→私を押して。)の中にとても分かりやすいビデオ・コンテンツを見つけた。「出版物→sk紹介ビデオ→『素粒子と宇宙の秘密を探る』」で見てごらん。
「研究内容紹介→『やさしい研究内容』」にもビデオ・コンテンツがある。こっちはイマイチ。
「研究内容→『遠近法的ディスプレイ』」にはチェレンコフ光(が何かは上記のビデオを見てね)をとらえた美しい画像があるよ。(僕は今これを編集してPCのデスクトップの背景にしてる。↓ その前は鎌倉で撮ったキノコの写真だった。^^)
この本はニュートリノのような自分の専門分野だけを取りあげているわけではない。
第3章「植物の基本は『いい加減さ』」では、奥飛騨にあるカミオカンデに勤務している頃、そのまわりの豊かな自然に触れている間に、「葉の形や枝ぶりなど、植物の形のいい加減さにあきれてしまい」、でも「なぜだろう?」と思い「外界の影響によって遺伝子の時間的発現が大きく制御されているはず。」考える。
さすが最先端の物理学者。前に紹介した寺田寅彦もそうだったけど、身の回りにワンダーをいつも感じているんだよね。
そこでいろいろ調べていくと、例えば「葉の多様性」についての「系統的な観察データがどうやら存在しないらしい」事が分かる。
じゃあ、ということで必要な項目を列挙してみて、「前述したような観察は中学生や高校生でもできる作業です。われわれの言う『系統的なデータベース』の構築を行ってほしいものです。」と結ぶ。
これも戸塚氏のブログに載ってる記事だ。 戸塚氏のブログ →私を押して。
ブログ内のカテゴリー「科学入門」がこの本の中心となる内容だ(本に掲載されている写真がカラーで載っていてわかりやすいよ)。
このブログの終盤はご自分の大腸癌の進行状況レポートで、最後は「父は7/10に亡くなりました。」という娘さんの記事で終わる。![]()
そこに載ってる写真がこの本の表紙にも使われている写真で、知的で、全てを包み込む優しい笑顔だなぁ。
この本の巻頭にある「最後のインタビュー(2週間後に亡くなっている)」でこんな事をおっしゃってる。
僕が嫌いな言葉が一つある。それは「子孫に負を残すな」っていう言葉。僕は「どんどん残せ」って言うんです。放射性廃棄物の処理にしても、環境問題にしても、エネルギー・食糧危機にしてもね。我々より頭が良くなってるはずなんだから、彼らに任せれば簡単にやっちゃうよ、って。そういうことを期待しています。
僕らも難しいって悲鳴を上げていました。昔も今も変わらないんだよ。いつでも、そうなんだよ。
死を前にして希望の光を後進に託す。ちょっと泣けてくる。
巻末に2005年に行った講義の妙録が載ってるんだけど、アメリカの理論物理学者ジョーン・バコールの言葉を借りて次のようなことも言ってる。
彼は、みんな「宇宙望遠鏡(ハッブルのこと) で何ができますか」というふうに聞いてくる。しかし、もし、できそうだと思われるものを見つけるだけだったら全然おもしろくない。予想をしなかったものを見つけるのが科学だ。
どういう風に質問していいかわからないような発見でないと、おもしろくないじゃないか。
読んでると希望がわいてくる本だ。“知的冒険心”にあふれている人だね(でも本当は末期癌で体調が悪かったんだろうね)。
ついでに:
戸塚氏も関係していた(そこからの文章も入ってる)「創造性の育成塾(→私を押して。)」っていうのがあって、そのHPの「第3回夏合宿授業風景・動画」にいろいろな人の中学2年生向けの講義が入っている。ノーベル賞学者利根川進氏とか、TVによく出てくる天文学者的川義宣氏とか、塩川正十郎(元財務大臣)なんて変なのも入ってるが、まだ全部は見ていないけどかなりおもしろいよ。ただちょっと長いけど。^^;
身のまわりはワンダーに満ちてる。それを感じるべし!
◆中学生で読める度:★★★★☆ ただし、数式はとばしてね。
◆内容充実してる度:★★★★★
東京は南岸を抜ける低気圧に北風が吹き込んで寒いっす。特に受験生は風邪をひかないように注意!
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あら、すうちいちゃん、上手に潜りこんだのね!
え、お父さんが脱いだ後、立体のままになっていたから簡単に入れたって?(笑)
by めりっさ (2008-11-13 17:11)
スーパーカミオカンデ、プール1000m地下にあるらしくて
連れで行ってといってますが
地下が嫌いみたいで・・・(笑)
by サプライ (2008-11-13 20:09)
>めりっささん まぁ、いわゆる“ぬぎっぱ”ですか。^^;
最初は上半身を入れてお尻を出してたんですけど、暑くなったのか気がつくと反転してました。
>サプライさん 行きたいですねー。でももう雪の中なんですかね?まだかな?
元は鉱山だからまわりのズリを探すといろんな石もとれそう。☆
by すうちい (2008-11-13 23:33)
愚息と一緒にスーパーカミオカンデのビデオコンテンツを見てきましたー。ちんぷんかんぷんな母をよそに愚息はPCにかぶりつくようにして見ていました。スーパーカミオカンデ、鉱山の跡地に作られているんですね。鉱物好きの愚息も「まだなんか落ちてたりしないかなー」と申しておりました。
by 素風 (2008-11-15 08:27)
>戸塚洋二氏はノーベル賞を取った小柴氏のお弟子さんで、小柴氏と共にスーパーカミオカンデでニュートリノの観測・研究をし、世界で初めて「ニュートリノに質量がある」ことを示した。
素晴らしい!いつもいつも、すうちい先生のブログは勉強になります。
戸塚先生の笑顔、とっても好いですね!ついでに、すうちいちゃんの阿波踊りポーズも可愛いです。
by アヨアン・イゴカー (2008-11-15 13:19)
>素風さん きっと落ちてますよー。♪
たぶん草の生えていない春が狙い目かと。ただ雪がどうかなぁ。
あのビデをコンテンツはお勧めですね。ちょっとアド街みたいなナレーションですけど。^^
>アヨアン・イゴカーさん うっ、確かに阿波踊りだ。^^;
死の病だって分かってるんだから、さっさとノーベル賞をあげれば良かったのにねぇ。
「ニュートリノに質量あり」ってそれまでの標準理論をひっくり返す大発見なんだから(と、よく分からずに言ってますけど)。
by すうちい (2008-11-15 21:17)
カルシウムの参考は理解しておくべきでしょうか
by New (2008-11-16 21:54)
誰だか分からなさすぎて、返事が難しいな。
でもカルシウムを持ってるって事はVコース生か。
とすると、見ておいても良いと思うよ。そんなに多くないし。
ただ基本的には発展までをしっかり理解してね。
by すうちい (2008-11-16 22:41)
ニュートリノの質量は、宇宙の運命を知る為にも、最重要項目でしたからね。(と言って、まだ決定付けられてないようですが・・・)
加速器オンリーのような風潮の中で、この施設もスバラシイですよね。
広大な闇の中に灯るチェレンコフ光って、とってもロマンチックな感じがします。
すうちいちゃん、周りのモノはアレですが(笑)、とってもカワイイ寝姿ですね。
by SAKANAKANE (2008-11-24 20:30)
こないだ東横線で一緒になった卒業生に「先生の部屋って汚いんですね。」と言われました。“カオス”な部屋と言って欲しいですけどね。
記事に入れたチェレンコフ光のデスクトップ背景、けっこう綺麗なんですよー。
by すうちい (2008-11-24 22:18)